司法試験を受験することを決意しましたか?
司法試験を受験しようと決意した瞬間から、あなたの人生は大きく変わります。
正しい計画を立て、日々の自己管理を徹底できれば、必ずゴール(合格)にたどり着くことができます。本記事では、司法試験合格のために欠かせない「計画立案」と「自己管理」について、筆者自身の体験も交えながら詳しく解説します。
まずは現在地点を把握するー女性弁護士になろう
計画を立てる第一歩は「自分が今どの地点にいるのか」を正しく把握することです。
- 法学部出身で法律科目をしっかり学んできた人、卒業からあまり年数が経っていない人
このタイプは、司法試験勉強に比較的スムーズに入れる地点にいます。 - 非法学部出身、または卒業から年数が経っている人
この場合は、スタート地点に立つための「準備勉強」が必要かもしれません。
私自身のお話をしますと、私は非法学部出身で、学部生時代に法律の授業を1つも取ったことがありませんでした。そもそも真面目な学部生でもなく…。 新卒で一般企業に入社しましたが、法務とはまったく縁のない仕事でした。一般常識もあまりなく、まさに「法律のほの字も知らない」という状態で司法試験受験を志しました。(そんな状態でなぜ?というあたりは別の機会にお話します。) つまり私の場合、受験を決意したときの現在時点は、他の人よりもかなり手間の地点。そこから合格までの計画を立てることになりました。
合格までのロードマップを描こう
自分の現在地を把握したら、そこからゴールである合格までの「道筋」を設計します。
おすすめは、合格者の体験記を読むこと。
法科大学院や司法試験予備校のサイトに載っている合格者による体験記やインタビューを読むことです。自分に近い経歴、スタート地点の人を探して読んでみることです。少し話を盛っているかもしれませんが、その人がどういう計画を立てて何年かけて合格したのかを自分に当てはめて見るのが良いと思います。自分と似たバックグラウンドの人を参考にし、何年計画で合格したのかをモデルケースにしましょう。
もし身近に合格者がいるのであれば、相談に乗ってもらうのももちろんよいですが、その人と自分のスタート地点が全然違うと計画立案にはあまり役立ちません。(河野玄斗さんという、東大理Ⅲ在学中に司法試験に受かった有名な人がいますが、彼は司法試験の勉強は半年くらいとのことです。彼の話を聞いても、あまりにスタート地点が違いすぎて合格のイメージはつきませんよね。)
たとえば法科大学院ルートなら、以下のような流れです。
【現在地点 → 法科大学院受験 → 法科大学院1年目 → 2年目(→3年目) → 司法試験受験 → 合格!】
あなたの置かれた現在地点によっては、法科大学院受験の前に少し勉強の期間を設けたほうがよいかもしれません。法科大学院も、2年コースではなく3年コースのほうがよいかもしれません。
難関国立大学に合格したことがあるなど複数科目を同時並行して勉強した経験の有無、そもそもの自分の作業効率の良さ、家庭の状況などを踏まえて、司法試験の合格まで何年計画でいくのか、大まかな計画を立てます。
Google SheetやExcelをつかって時系列にやること・ゴールを可視化する方法がおすすめです。その際、たとえ本試験受験が4年後だとしても、そこまで「あと◯日」というように数字が表示されるようにします。時間軸を可視化することで、1日1日がどれほど貴重で無駄にできないか、毎日少しずつ前に進んでいるか、ノルマを達成できているかを自分で確認できる効果があります。
計画を立てるときの注意点
ここで、計画を立てるにあたって注意点が2つあります。
走り続ける計画にする
1つ目は、走り出したら合格まで勢いよく走り続けるような計画を立てることです。
司法試験は科目数が多くやるべきことが多いので、自分に甘い人は長期計画を立てがちです。
法科大学院を修了しても、すぐに司法試験を受験せず「もっと実力がついてから受験する」といって少しインターバルを設ける人がいます。しかし、そういった行為は中だるみにつながり、合格可能性を下げるだけです。受験を決意した瞬間から合格までは一定の熱量で休みなく駆け抜けなければいけません。
必ず1回で合格する計画にする
注意点の2つ目は、必ず1回で合格するような計画を立てることです。
試験制度としては最大で5回受験できることになっていますが、だからといって、5回以内に合格する計画を立てることはしないでください。あなたが5回目で受かるということは、今から法科大学院を受験し、法科大学院に2年通ったとして、合格は7、8年後ということです。一般論として、7年8年もの長い期間モチベーションを高いまま維持するのは難しいです。
実際、合格者の平均受験回数は2回以下と言われています。圧倒的多数が1回目か2回目の受験で合格しているということです。自分に甘めの、ゆるい長期計画は合格可能性を下げるのです。1回目で合格する目標で計画を立てましょう。
自己管理こそ最大の武器
合格へ向けた正しい計画を立てたら、さっそく動き出しましょう。 法科大学院の入試対策を始めるのか、その前に入門書を読むところから始めるのか、司法試験予備校の講座を受講するのか、人それぞれのはじめの一歩があると思います。 いずれにしても、実際に一歩を踏み出したら、確実にゴールまで走り抜けましょう。
そのためには、日々サボらず計画どおりに勉強を積み重ねる必要があり、徹底的な自己管理が要求されます。これは、まさに合格まで自分をいかにマネジメントするかということです。
自己管理というと、ものすごくストイックでなければならないようで「自分には無理かも…」と引いてしまう人が多いと思います。もちろん、合格までの数年間はサボらず緩まず勉強を継続するストイックさが必要です。
でも、自己管理とは、必ずしも根性論で歯を食いしばって耐えることだけではありません。 「スケジュールに従って勉強を継続するぞ!」という強固な意志も大事ですが、勉強を継続できるような環境をつくること、そこに自分を置き続けられるようにすることも自己管理のひとつなのです。
物理的な勉強環境の整備
まず、物理的な勉強環境を整えること。
これは親が子供に学習習慣を身に着けさせるときにやるべきだと言われていることと同じです。遊び道具が散らかった騒がしい部屋で「勉強しなさい!」と言っても子供がなかなか集中できないように、集中力は物理的な環境に左右されるところが大きいのです。
なので、司法試験勉強を継続するにあたっても、まずは集中できる環境を整えることが大事です。家であれば、机、椅子、棚、照明、空調を整える。家族やペットがひっきりなしに出入りして邪魔をすることがない場所を確保しましょう。 家ではそのような場所を確保できない、あるいは家では集中できないという人は、家の外で自習室を確保しましょう。法科大学院に入学すれば、1人1席の自習室利用が認められます。法科大学院の自習室は、パーテーションで机が区切られていて気が散らないようになっていますし、周りにも必死に勉強している人がいますので一番おすすめです。
スペースの確保ができたら、机に並べるもの・視界に入るものはシンプルにします。おすすめは、その日に取り組む教材のみを机上に並べ視界に余計なものが入らないようにすることです。
全部の科目の教材が視界に入るとつい好きな科目に手が出てしまったり苦手科目への焦燥感が湧いてきたりして計画通りに勉強が進まなくなることがあります。そうならないように、今日やる分だけが視界に入るようにしましょう。
音に敏感な人は、ノイズキャンセリングヘッドフォン、イヤーマフ、耳栓などをいくつか試してみてベストなものを手に入れましょう。
ついお腹がすいて気が散ってしまうという人は、いちいち何かを食べるために席を立つことがないよう、ガムなどを常備し食欲を紛らわす工夫をしましょう。
携帯電話は用もないのについ触ってしまうものなので、離れた場所(ロッカーなど)にしまいます。時間の確認のためだとしても携帯を触ることは集中を阻害するのでNGです。
このように、自己管理の一環として、物理的な勉強環境を整え、自分の集中を妨げるものを徹底的に排除することが重要です。
メンタルを安定させる
物理的な勉強環境を整備しても、どうしても気が散る、集中力を保つことができないという人がいます。
そういう人を見ていると、メンタルに問題を抱えているように思います。メンタルといっても大げさなものではなく、なんとなく不安定、なんとなく不安、という程度の問題です。 なんとなく不安定、不安という人は、往々にして(無意識かもしれませんが)人と自分を比べています。人より上に見られたい、人より下だと思う、あの人のやっていることが気になる、かっこつけたい、かわいく見られたい、人からどう見られているか気になる、よく見られたい、恥をかきたくない…といった具合です。人との比較目線からくるさまざまな思いが起因して、眼の前に広げている教科書とは別のところに意識がふわふわと飛んでいってしまいがちなのです。
こういう場合、まっさきに取り組むべきは「人と比べてしまうこと」を止めることです。 「人と比べること」は習慣化してしまっているので、それを止めるのは難しいかもしれません。 でも、それなりの投資をして、司法試験の勉強を始めたあなたは、いま「人生崖っぷち」です。何が何でも合格して弁護士にならなければ、収支マイナスの黒歴史を抱えることになります。そんな状態のときこそ、人と比べることを止めるよいチャンスです。
かっこつけることも、劣等感を抱くことも、嫉妬も、優越感も、周囲の人間からの評価も、外見も、何もかも、社会と断絶した状態の司法試験受験生にとってはどうでもいいことです。ただ1つ、合格という結果さえ出せればいいのです。 人生のうちたった2、3年間、司法試験の勉強をしている間だけでいいので「人と比べること」を凍結しましょう。
そうすれば驚くほどにメンタルが安定します。メンタルが安定すれば、集中できるようになり計画どおりに勉強を進めやすくなります。
自己管理は「ミニマリスト」的発想で
物理的な勉強環境を整え、メンタル問題を克服したら、自己管理としては上々です。 もう1つ重要なのが「捨てる作業」です。
これは筆者の経験から言えることなのですが、司法試験に落ちる人は「捨てられない人」なんです。
何の話かというと、普段我々が大きな目標なく暮らしているとき、我々の生活を構成する要素はとても多いんです。 一般的な女性であれば、美容、健康、子供や家族のこと、食事、人付き合い、仕事、掃除、洗濯、メイク、ファッション、SNS、趣味、推し、流行りのもの、雑多な買い物、季節のイベント、冠婚葬祭、携帯などのデバイス、家・車・物の管理・メンテ、、、、ひっきりなしにやるべきこと・考えるべきことがやってきます。これに加えて、YoutubeやInstagramを見る人であれば、いつでも世界のどこかからおもしろ動画がアピールしてきます。 普段の生活は、これでいいのです。人や物、やるべきことに囲まれてにぎやかに暮らしていくのは幸せなことです。
でも、1つの大きな目標に向かっている時期は、これではダメなのです。多くの要素に囲まれるなかで勉強に集中をするということは、非常に難しいからです。 実際に、多くの脱落した受験生たちがそうでした。「普段の生活」を捨てられないため、集中して勉強している時間が圧倒的に足りないのです。集中できない、継続できない、というのは、根性が無いからではなく、生活を構成する多くの要素を捨てきれずそれらに邪魔をされ続けるからなのです。
司法試験の勉強をスタートしたら、一番最初に捨ててほしいのは、あなたが「好きで好きでやっていること」です。 もしあなたがメイク好きで、新しいメイク道具や方法を研究して毎日かならずきれいにメイクしてでかけている人であったら、司法試験に合格するまでメイク好きを捨ててください。捨てるというと拒否反応を示す人がいるかもしれませんので、「停止」と言い換えてもいいかもしれません。合格するまで、停止です。ノーメイクで出かけろとは言いませんが、5分で終わるような最低限のメイクで済ませるようにして、メイクの情報を目にすることも止めましょう。メイク道具売り場にも近づきません。合格したら「死ぬほどメイクしてやる!」と思いながら、勉強しましょう。
大好きなものを1つ停止できたら、2番めに好きなもの、3番めに好きなもの、と徐々に要素を捨てていきましょう。 好きなものを停止し、視界から、そして頭の中から消し去ってしまう。そうすることで、集中して勉強することを継続することが簡単になります。
好きでやっていることをいくつか捨てることができたら、次は社交関係をばっさり捨てましょう。友達からの誘い、同窓会、冠婚葬祭は早い段階でさらっとお断りをします。2、3年くらいつきあいが悪い変人な時期があったとしても、司法試験の合格後に「実は・・・」と種明かしをすれば皆理解してくれます。
子供や家族のこと、家事は最低限しなければなりませんが、これについても、2、3年くらいの限定だと言って頼み込んで他の家族に頼んでしまいましょう。料理も掃除も、人生の数年間手を抜いてもどうってことありません。子供がいる人は、必死に勉強する親の背中を見せる時期だと割り切りましょう。
どんどんと捨てていきましょう。やがて生活を構成する要素が少なくなっていきます。ミニマリストのようになれば自己管理としては大成功です。シンプルになった毎日を、ただひたすらに目標に向かって勉強し続けて過ごせばいいのです。
まとめ
司法試験合格の鍵は、
- 現在地点を正確に把握すること
- 合格までの道筋を「一発合格」の計画として描くこと
- 計画を実行するために徹底した自己管理を行うこと
に尽きます。
筆者も「法律のほの字も知らない」地点からスタートしました。だからこそ言えます。どんな地点からでも、正しい計画と徹底した自己管理があれば合格できるのです。
司法試験は確かに難関ですが、不可能ではありません。人生の数年間を「司法試験合格」に全振りする覚悟があれば、道は必ず開けます。
コメント