女性弁護士は偏って存在している?
女性弁護士は2024年4月時点で9208人。そのうち東京都の弁護士会に所属している女性弁護士は5001人。半数以上を占めています。
ですから、東京にいると、女性弁護士に遭遇することは少なくありません。東京の裁判所では、裁判官も書記官も原告代理人も被告代理人も女性というようなケースもあります。
他方で、いくつかの地域では女性弁護士の人数・割合がとても少ないところがあります。
例えば、徳島県を例に見てみましょう。
徳島県の弁護士会には2024年4月時点で92人の弁護士が登録しています。
そのうち女性弁護士はわずか7人しかいません。女性比率は7%台ととても低いです。
もし徳島県で女性弁護士による司法サービスを希望している方がいらっしゃった場合、この7人の中から探さなければいけないわけです。
女性弁護士とひとくくりにしても経歴やタイプなどは様々ですから、たった7人の中からベストマッチングする女性弁護士をみつけるのはとても難しいと思います。
女性弁護士側としても、「多忙」「報酬などの条件が合わない」「専門外」といった理由で断ることが可能なので、マッチングはますます困難だといえます。
また、徳島県といっても広いので、徳島地方裁判所の他にいくつかの支部があります。法律事務所はだいたい地方裁判所の本庁の近くに所在していることが多いので、女性弁護士も本庁のあたりに偏在している可能性が高いです。そうすると、本庁以外の支部で女性弁護士をみつけるのはほぼ無理ということになります。
もちろん男性弁護士についても同様に地域による格差はありますが、男性弁護士の場合そもそもの母数が大きいので、女性弁護士へのアクセスほどに地域格差は深刻ではありません。
女性弁護士へのアクセス確保の重要性
女性弁護士にアクセスできない人がいるということは、なにが問題なのでしょうか。
弁護士の仕事は、女性だから男性だからと、やれることに色分けがされているわけではありません。特に最近は、全国的にみれば女性弁護士の割合も増えてきているので、様々なフィールドで女性弁護士の活躍が見られます。
ただ、クライアントの立場からすると、相談の内容によってはどうしても女性弁護士のほうが相談しやすいという場合があります。
例えば、女性が被害者の性暴力の事件。
被害者が弁護士のサポートを受けて何らかの法的アクションを起こそうとするとき、弁護士に被害の詳細をシェアしなければなりません。加害者と同性の弁護士に相談するのは抵抗がある、デリケートな身体のことを話すのは同性がいい、というような心情を持つのは当然のことでしょう。
ほかにも、デリケートな内容を含む家庭の問題。
夫婦関係がこじれた原因が性交渉に関する問題であることがあります。私の知るケースでは、結婚後に発覚した夫の特殊な性癖が耐え難く離婚したいというものがありました。このようなケースでは、どのような特殊な性癖があるのかについて主張・立証しなければなりませんから、クライアントとしては「この人になら話せる」と思えなければ依頼できません。
雇用の問題がセクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントに起因する場合なども同様です。
これらは一例に過ぎません。どのようなケースであれ、クライントが特に女性弁護士を希望することというのはありうるわけです。
特定の地域においてそういった希望が実現しないということは、当事者が司法サービスによる問題解決を諦めるきっかけとなるかもしれません。
しかたなく男性弁護士に依頼をしたものの、うまくコミュニケーションが取れず満足のいくサービスを受けられないかもしれません。
ですから、女性弁護士へのアクセスをある程度平等に確保することはとても重要なのです。
女性弁護士へのアクセス格差を是正しようと、日本弁護士連合会も積極的に活動をしているようです。例えば、女性弁護士の偏在解消対策を必要としている地区で女性弁護士が開業する場合に支援を行うといったようなサポート体制を敷いています。
もしみなさんが、司法試験に合格後、こういった社会問題の解決に寄与したいと考える場合は、女性弁護士偏在解消対象地域での就業・開業をぜひ検討してみてくださいね。