弁護士という職業において、法解釈や論理的思考力に男女の差はありません。
しかし、実際の法律実務の現場では、クライアントから寄せられる期待や、事件解決へのアプローチにおいて「女性弁護士ならではの弱み・強み」が明確に存在することも事実です。
「女性弁護士と男性との違いは何なのか?」という問いは、これからキャリアを築く若手弁護士や、弁護士を目指す学生にとって、自身のブランディングを考える上で極めて重要なテーマとなります。
この記事では、性差による弱みと強みを客観的に捉え、それをいかにして専門性の向上とキャリア形成に結びつけていくべきか、その具体的な戦略を解説していこうとおもいます。
女性弁護士と男性弁護士の「違い」をどう捉えるべきか
まず前提として、弁護士としての能力そのものに性別は関係ありませんが、クライアントとのコミュニケーションという局面では大きな違いがあります。これは弁護士として稼働してきた女性としての「本音」であって、「建前」は排除しています。
まず、初対面のクライアントと会う場合、クライアントは「ルックス」「話し方」などの外面的要素を当然チェックします。
女性、とりわけ若い女性に対して、「おっ」と驚くような反応をされることが多くあります。私も嫌と言うほど経験しました。「おきれいですね」とか「美人弁護士」とか余計な形容をされることも多く、「もの珍しいもの」として扱われることも多いです。
実際、同じ内容の会話をするにしても、年配男性の低い声で聞くのと、若い女性の高い声で聞くのとでは印象が異なるはずです。なので、残念ながら、クライアント目線で見れば、男性弁護士と女声弁護士の間には大きな「違い」があると言わざるを得ません。
そして、ズバリ誤解を恐れずに言い切ってしまいますと、女性であることがアドバンテージである場合は限定的です。
弁護士というのは、サービス業なので、「タレント」さんと同じような職業です。性別・年齢・見た目の影響を受けるのは当然のことなのです。
また、コミュニケーションという点でいえば、男性弁護士のほうが人脈構築に長けていると感じます。長けているのか、社会の中枢に存在する母数が多いからなのかは不明ですが、歳を重ねるほどに男性のほうが人脈を活かしていく様子が伺えます。
性差という最もデリケートなところがありますので、積極的に男性が女性と繋がろうとするのはリスクがありますよね。なので、男性同士でどんどんと人脈を広げていく傾向が強くなってしまうのは仕方ないことでしょう。
もちろん、女性弁護士の中にも、積極的に異業種交流会などに顔を出してガンガン人脈を広げている方はいらっしゃいます。ただ、ほとんどの女性弁護士はなかなかそういった動きはできていない(していない)のが現状です。
現場で発揮される「女性弁護士ならではの強み」とは
では、女性弁護士の強みは何なのか。
女性弁護士が実務で高く評価される要因の一つに、丁寧なヒアリング能力と、そこから生まれる信頼関係の構築力が挙げられます。個人のクライアントの場合は、往々にして強い不安や混乱の中に身を置いていますので、こういった「共感力」に大きな安心を覚えることでしょう。
この「安心感の提供」こそが、特に個人向けのリーガルサービスにおいて最大の差別化要因となります。男女問題のようなデリケートな内容の場合は、女性弁護士を所望するクライアントが多いのも納得ができます。
企業法務においては、基本的に性差は感じられません。ただ、労働組合との交渉のような緊張感のある場面では男性が活躍することが多いように思います。
クライアントが「相談しやすい分野」と女性弁護士の需要
…ここまで書いてきて、気付いた方もいらっしゃると思いますが、正直「男性弁護士の強み」はあると思いますが、「女性弁護士の強み」は所詮数値化出来ない感覚的なものです。
そのような強みが活かせるのは、特定の分野においてクライアント側が女性に担当してもらいたいという心理的なバイアスを持っている場合です。
家事事件・男女問題における圧倒的な支持
家事事件のうち、離婚問題、特にDV(家庭内暴力)やモラハラ、親権争いなどの繊細な問題において、女性クライアントが女性弁護士を希望するケースは非常に多いです。また、不倫などの慰謝料請求も、性的な部分などデリケートな内容に踏み込む必要があるため同様です。
ハラスメント事案への対応
近年のコンプライアンス意識の高まりにより、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントといった事案が増加しています。
こうした事件の調査や被害者対応において、威圧感を与えずに事実を聴き取ることができる女性弁護士の役割は不可欠です。事案によっては、企業側から、できれば女性弁護士にヒアリングをお願いしたいというようなリクエストが来る場合もあります。
戦略的なキャリア形成:自身のブランドをどう磨くか
司法試験に合格するまでは、100%同一だった男性と女性ですが、上記のような「違い」があるため就職のあたりから「性差」を感じる人が出てくると思います。また、その後弁護士としてキャリアを積み重なる上でも、「性差」はそこに存在するでしょう。
特に都心部で実務をされる予定の方は、クライアント側にも多くの選択肢がありますので、ご自身のキャリアについて初期段階から綿密に戦略を練ることをおすすめします。
理想としては、性別という属性を超えた「独自の専門性」を確立することがベストです。
「女性だから」選ばれるフェーズから、「特定の分野のプロフェッショナルであり、かつ女性としての視点も持っている」というフェーズへ移行することが、キャリア形成の成功の鍵となるでしょう。
「専門性」は人それぞれだと思います。自ら勝ち取っていく専門性もあれば、たまたま就職した事務所で特定の案件が多かったということで身についていく専門性もあるでしょう。専門性にしたいと思っている分野が収益面では振るわずボランティア活動になってしまう場合もあるかもしれません。
どのような「専門性」であれ、早い段階から強く意識することが重要です。性差を現実として捉えた上での地道なブランディングこそが、変化の激しい現代の法曹界において、あなたを支える強固な基盤となるでしょう。
